嗤うケダモノ

獲物に向かって疾走する肉食獣のスピードで日向がいるはずの教室に辿り着いた由仁は、ノックもなく豪快に引き戸を開け放った。

コチラを見て、目を丸くする男子生徒たちがいる。
コチラを見て、頬を染めて騒ぎだす女子生徒たちがいる。

だが、日向はいない…


「日向なら、もう委員会に行きましたよ?」


教室中に視線を走らせる由仁に 寄ってきたヨコタさんが声を掛けた。


「遅かったかー…」


力尽きたようにその場に崩れ落ちた由仁が、両手で頭を抱えて呻く。

うん。
もはや絶望感が漂ってるネ。

そんな由仁に、さらなる追い討ち。


「ジャマです。」


険のある声とガムテープやビニールテープがわんさと入った段ボールが、頭上に降ってきた。

身体を傾け、段ボールを避けつつ仰ぎ見ると…

おや。
久しぶり、タニグチくん。


「扱いヒドいしー。
前も悪口言われたしー。
ひょっとしてタニグチくん、俺のコト嫌いー?」


骨ばった手で顔を覆った由仁が 泣き真似を披露した。

いや、その前に退いてやれよ。

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