嗤うケダモノ
壱
長い雨が続く季節になった。
空はいつも灰色だし。
靴は濡れるし。
髪は湿気を吸って広がるし…
(憂鬱…)
物憂げに溜め息を吐いてから、日向はオカ研部室のドアを開けた。
足を踏み入れようとして、ピタリと動きを止める。
由仁が、奥にあるデスクの下に小さくなって潜り込んでいたから。
日向を見て、怯えたように身体を揺らしたから。
今度はなんの儀式だ、こりゃ。
「…
ナニやってンすか?」
「ヒナ、閉めてっ
早く閉めてっ」
蹲ったままの由仁が、珍しく慌てた声を上げる。
後ろ手に扉を閉めてから、日向はもう一度問い掛けた。
「ナニやってンすか?」
「隠れてンの。」
…
ハイ?
丸見えじゃねーかよ。
アホか?
アホなのか?
てか、この年になってかくれんぼ?
こんなに鬱陶しい天気なのに、楽しそうだな、このアホは。