嗤うケダモノ

片手でセミロングの黒髪を背に流してから、日向は由仁の前にしゃがみこんだ。


「誰から隠れてるンですか?」


「樹。
論文書けってゆーの。」


「それくらい書いちゃえばイイのに。」


「イーヤー」


「じゃ、帰っちゃうとか。」


「もっとイヤー
ヒナといる時間が減るー。」


…アホの上、駄々っコか。

容姿も振る舞いも、同世代とは思えないほど大人びているクセに。

彼はいつも、まるでコドモのように真っ直ぐ愛を訴えてくる。

態度で。
言葉で。

彼の全てで。

なのに…

ズキズキ

日向が胸の痛みを隠して唇に微笑みを浮かべた瞬間…

バターン!

扉がけたたましく開かれた。

目を見開いた日向が振り返る。
青ざめた由仁が顔を上げる。


「見つけたぞ、ジン。」


腕を組んだ樹とにこやかに手を振る百合が、かくれんぼの終了を告げた。

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