嗤うケダモノ
壱
「…
なんで部室があるンですか?」
第二理科室の隣の、準備室のそのまた隣の、物置の鍵を開ける由仁の手元を眺めながら少女は呟いた。
オカルト研究会に所属しているのは、彼一人のハズ。
決められた人数に満たなければ『部』とは認められず、『同好会』扱いになるハズ。
当然、部室なんて与えられないハズ…なんだケド?
「オカルト現象の解明も立派な科学デスヨネーって言ったら、センセーがくれたー。」
振り向いた由仁が、艶やかに微笑んだ。
確か科学教諭はアラフォー独身女性。
なるほど。
そーやって笑って、タラシこんだンデスネ。
ワカリマス。
「おいで。」
微笑みと手招きに促され、少女はオカ研部室という名の由仁の城に足を踏み入れた。
入口は、人一人通れるスペースの両側に天井までのスチールロッカーという、地震対策はどーしたと言いたくなるような家具配置になっているものの、奥は意外に広い。
窓際にはパソコンが乗ったデスクとチェアがあり、古いながらも三人掛けのソファーまで置かれている。
うなぎの寝床なりに、快適。
てか、一人部室にしては贅沢すぎンだろ、コレ。