嗤うケダモノ
透明感のある白い肌。
奥二重の、切れ長の目。
左の目尻の下には泣きぼくろ。
流し目ぎみに視線を送られたら 失神するとかしないとか。
傾国の美姫も、かくやあらん。
だけど、薄い唇やシャープなフェイスラインには、女性的な要素は皆無。
いつもしどけなく開いたシャツの胸元から覗く喉仏や鎖骨は、男であるコトを主張するようにクッキリと浮き出ている。
少し伸びた黒髪は…
エアウェーブなのカナ?
毛先が無造作にふわふわ遊んでいる。
滲み出る男性的な色気。
滲み出る女性的な色気。
ソコに気怠げな雰囲気までもが加わって。
彼を一言で表すなら
『妖艶』
コレに尽きる。
彼はウチの高校どころか、近隣でも有名人だ。
多くの女子、それどころか一部の男子までも、彼に憧れを抱いている。
だが、恋をしているのはほんのひと握り。
隣に並んで見劣りしないと自負するフジコちゃんやマリリンだけが、果敢に彼に挑んでいく。
だが、誰一人として彼を陥落させた者はいない。
『美しすぎる草食男子』
『難攻不落のペガサス』
そんな、(笑)がつくような異名を持つ彼は…
実は草食動物なんかじゃない。
ガッツリ肉を食らうケダモノだというコトを、私こと、木崎 日向(キザキ ヒナタ)は知っている。