嗤うケダモノ
乱れた着物の胸元を直しながら 溜め息混じりに女が呟く。
「全く…
恐ろしい小娘だよ。
あんたの男もそうだけど。
お似合いだよ、あんたら。」
「へ?」
『あんたの男』って…先輩?
恐ろしいって、どーゆー意味?
てか、この人なんで先輩のコト知ってンの?
パチパチと目を瞬かせる日向を見て、女が笑う。
楽しそうに。
だが、寂しそうに。
「ここは男子禁制なんだけど、命捨てて入ってきちゃったみたいだねぇ、あんたの男。
今、あちこちぶっ壊しながらあんたを捜し回ってるよ。」
「ぅえええぇぇぇぇぇ??!!」
日向の絶叫が暗闇に響き渡り、女は慌てて耳を塞いだ。
「どどどゆコト?!
せせ先輩ドコ?!
てか、先輩死んでンの?!」
もはや日向はパニック状態。
引きつった頬に両手を当て、由仁の姿を捜してキョロキョロと視線を彷徨わせる。
女はそんな日向に手を伸ばし、優しく髪に触れた。
「大丈夫だよ。
落ち着いて。
もうすぐ会えるから。」
穏やかに宥める言葉と、ゆっくり髪を梳く小指のない手…