嗤うケダモノ
ほんの少し平常心を取り戻した日向は、女の声がやけに苦しそうなことに気づいた。
そして、女の胸が小さく縦に裂け、そこから眩い光が漏れていることも…
「え… ケガして」
「ねぇ、一つ教えて?」
日向の言葉を遮った女は、微笑みながら問い掛けた。
その間にも、胸の裂け目は大きくなっていく。
「不安を打ち明けたとして、男があんたの望む答えを出さなかったら…
どうするんだい?」
「ちょ… そんなコトより傷」
「いいから、答えてよ。」
裂ける、裂ける。
裂け目は広がり続ける。
光は溢れ続ける。
それでも女は笑っていた。
「男があんたを…
愛を裏切ったら。
どうするんだい?」
『わちきは壊れる』
そう、女は言った。
胸の裂け目がきっとその理由。
最期を受け入れて、女は笑っているんだろう。
真摯な眼差しで女を見つめた日向は、深く息を吸ってから口を開いた。
「殴る。
いや、泣きながら殴るね。」