嗤うケダモノ
「…は?」
「拳が壊れるくらい殴って、涙が涸れるくらい泣いて、それでもまだ忘れられなかったら…
こっそり、ずっと好きでいる。
先輩のキモチが消えたからって 私のキモチがなくなるワケじゃない。
好きでいるのは自由でショ?」
一気に喋り終えた日向が、ふん と鼻息を吐き出して腕を組む。
見事なドヤ顔ですな。
唖然としていた女が、とうとう吹き出した。
「あはは、なるほどねぇ。」
女の胸から漏れる光が辺りに満ちていく。
その光の中心に、日向に向かって伸びてくる骨ばった手が見えた。
「わちきも、まだあの人が好きだよ。
もう二度と逢えなくても、大好きだよ。
わちきもあんたみたいに馬鹿になって、あの人を愛せばよかった…」
悪口デスカ。
ソーデスカ。
文句を言おうと日向が唇を尖らせた瞬間…
女は砕け散った。
「日向!!」
強く掴まれた手首。
引き寄せられたと思った途端、巻き込むように抱きしめられる身体。
眩しくて目も開けられないが、この腕は、この声は…