嗤うケダモノ
伍
瞼を上げた日向は、勢いよく上半身を起こした。
ソコは黒いソファーの上。
愛想のない無機質な蛍光灯。
細長い部屋をもっと細く見せるロッカー。
オカ研部室だ。
戻って来たンだ。
(先輩は‥‥‥?)
日向が視線を落とすと、捜し求めるその人はすぐに目に飛び込んできた。
力なく床に横たわり、はだけた胸にコードの伸びる白いパッドを貼りつけられた由仁が…
「イヤぁっ?! 先輩っ??!!」
日向は甲高い悲鳴を上げて、由仁に取り縋ろうとした。
が、背後から百合に羽交い締めにされる。
「ダメ! 感電するわよ!」
「でも… でもっ!先輩が!」
「大丈夫よ!
ジンは戻ってくる!
樹を信じて!!」
百合にそう言われて初めて、日向は由仁の隣に膝を着く樹の存在に気づいた。
伸びたコードの先にあるAED本体のポタンに、慣れた様子で樹が触れる。
途端に跳ね上がるしなやかな肢体。
そして、息つく暇もなく始まる胸骨圧迫。
これは、間違いなく…