嗤うケダモノ

『助けてー』『捨てないでー』

その他諸々の悲痛な叫びを残して、由仁は樹に引きずられながら退場。

なんつーか…
ご愁傷サマ。

同情するよ、ホント。


「大丈夫?」


心配そうに声を掛けた百合に助け起こされ、日向は乱れたスカートの襞を整えた。

静かになった部室に、雨の音が響く。

だけど… ナゼだろう?

さっきと違うように聞こえる。

悩んで。
苦しんで。

一人キリで抱えていた不安は、口に出した途端
『バカだよねー』
と一蹴されてしまった。

ムカつく。

でも、胸の痛みはキレイサッパリ消え去った。

こんなに簡単なコトだったンだ。

これからも、不安は何度も襲ってくるだろう。
信じる心が折れそうになることもあるだろう。

だけど、もうコワくない。

その度に、何度でも、彼の
『バカだよねー』
が、私を救ってくれるから。


「大丈夫です。
ご心配おかけしました。」


顔を上げて百合を見た日向は、晴れやかに笑った。

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