嗤うケダモノ

いやいや…

そんな蕩けきった顔で『行こー☆』なんて言われましても…

杏子は憂いに満ちた表情で由仁から目を逸らした。


「私は行かなきゃなンないような気がするケド…
ジン、アンタはやめときな。」


「えー? なんでー?」


「…
さっきの人…
アンタを拾った日、私が泊まった宿の女将さんらしいンだ。
つまり…
ソコに行くってコトは…」


生まれた地に還るというコト。

消えた母親の謎。
九尾の謎。

由仁の出生の謎が眠る地に還るというコト。

妙な胸騒ぎがする…

なのに由仁は、


「へー、そーなのー。
そんなコトより温泉行こー☆」


なーんて、満面の笑みでホザきやがりマシタYO!

期待にキラキラ輝く瞳。
堪えきれずに綻ぶ口元。

脳内はバニーちゃんの浴衣姿onlyデスカ。
ソーデスカ。


(…
育て方を間違っちまったかも知れないねェ…)


我が子のバカさ加減に衝撃を受けた杏子は、肩を落として天井を仰いだ。

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