嗤うケダモノ
瑠璃子が『家族旅行気分で~』なんて軽いノリだったのも、そういう理由なら頷ける。
逆に軽いノリで対応できなかったのは杏子のほうだった。
だってさー…
青沼家との関係性はわからないが、『狐』には心当たりアリまくり。
消えてしまった、腹を裂かれて死んでいた女。
女の腹を裂いたと思われる白く輝く巨大な獣、九尾の狐。
そして…
九尾に憑かれた女の息子、由仁‥‥‥
今回の噂は、18年前の出来事と関わりがあるのだろうか。
もしあるのだとしたら、青沼家の人たちはどう絡んでいるのだろうか。
始まりの場所で、いったいナニが待つというのだろう…
なんの因果か、季節はまた夏。
昔より栄えたとはいえ、鮮やかな濃緑の山々が映える窓の外をバスに揺られながらボンヤリ見つめていた杏子は…
「ん? んん?
ちょっと待って?
今、マンガだったら過去編とかってテコ入れになりそーなネタ、サラっとカミングアウトしませんでした?
ナニ?
先輩と杏子さんって、血が繋がってナイの?」
「うん、そーなのー。
テコ入れになるほどドラマチックじゃないケドネー。」
同行している二人の声で、我に返った。