嗤うケダモノ
その二人とは、もちろん由仁と日向。
どうやら由仁が、今から向かう場所の説明のついでに、己の出自をペロっと日向に明かしたようだ。
うん。
軽いネ。
重くしようと思えばドコまでも重くできるネタを突然軽ーく披露されて、日向がリアクションに困ってンじゃねーか。
「ごめんネ、ヒナちゃん。
こんなバカ息子で。」
眉をハの字に下げた杏子がすかさず口を挟む。
すると、某遊び人ブランドのワークキャップをカクカク揺らしながら、日向は首を振った。
「いえっ いえいえいえ。
先輩はバカじゃないデス。
豪胆ってゆーか、男らしいってゆーか、ナニも考えてナイってゆーか…
あれ?」
『あれ?』じゃねーよ、日向サン。
フォローになってねーよ。
バカって意味だよ、ソレ。
首を傾げる日向の頭に手を乗せた由仁が、膨れっ面で口を開く。
「バカ言うな。
だって、どーでもよくね?
そんな小っちぇコト。
てかさー、湯上がりのヒナに比べたら、世界の全てがどーでもよくね?」
ハイ、間違いなくバカだ。
顔を見合わせた日向と杏子は、あえてナニも言わずに深い溜め息を吐いた。