嗤うケダモノ

杏子に負けず劣らず愛想の良い営業スマイルを見せる瑠璃子。

お荷物をお預かりします、という女将の一言を
合図に、すかさず寄ってくる仲居サンS。

ナニからナニまで完璧…

とはいかないのが、人の成せる業。

杏子と瑠璃子がフロントに向かうと仲居サンSは小声でお喋りを始めた。

いや、イイのよ?
女のコは幾つになってもお喋り好きな生き物だって、知ってるしさ。

でも、その内容がさー…


『イイ男! 鼻血出そう!』
『物凄いセクシーなカップルよね、お似合いー!』
『キレーな年下カレシとか、羨ましー!』


(アハハー…
私なんぞ、視界にも入ってねェってかー…)


日向は漏れそうになる乾いた笑いをなんとか飲み込んだ。

仲居サンSの目には、
『由仁×杏子 → カップル』
と映っているらしい。

そりゃそーだよね。

今日は着物じゃなくてスーツ姿だケド、やっぱり杏子さんはリアルフジコだし。

相変わらず白いシャツとジーンズだケド、やっぱり先輩は全身猥褻物だし。

てか二人とも、異常に年齢不詳だし。

二人で並ぶとムダにエロい世界が出来上がって、常人は入っていきにくいもん。

そりゃお似合いカップルに見えるよネ…

< 336 / 498 >

この作品をシェア

pagetop