嗤うケダモノ
杏子に負けず劣らず愛想の良い営業スマイルを見せる瑠璃子。
お荷物をお預かりします、という女将の一言を
合図に、すかさず寄ってくる仲居サンS。
ナニからナニまで完璧…
とはいかないのが、人の成せる業。
杏子と瑠璃子がフロントに向かうと仲居サンSは小声でお喋りを始めた。
いや、イイのよ?
女のコは幾つになってもお喋り好きな生き物だって、知ってるしさ。
でも、その内容がさー…
『イイ男! 鼻血出そう!』
『物凄いセクシーなカップルよね、お似合いー!』
『キレーな年下カレシとか、羨ましー!』
(アハハー…
私なんぞ、視界にも入ってねェってかー…)
日向は漏れそうになる乾いた笑いをなんとか飲み込んだ。
仲居サンSの目には、
『由仁×杏子 → カップル』
と映っているらしい。
そりゃそーだよね。
今日は着物じゃなくてスーツ姿だケド、やっぱり杏子さんはリアルフジコだし。
相変わらず白いシャツとジーンズだケド、やっぱり先輩は全身猥褻物だし。
てか二人とも、異常に年齢不詳だし。
二人で並ぶとムダにエロい世界が出来上がって、常人は入っていきにくいもん。
そりゃお似合いカップルに見えるよネ…