嗤うケダモノ
弐
時の流れは、由仁の足も進化させていた。
チャリから、ビッグスクーターに。
YAMAHA マジェスティ250だ。
藤ヶ丘高校では、基本バイク通学は禁止されている。
許可を得るには、真っ当な理由をつけて申請し、審査を受ける必要があるのだが…
『部室』と同じように、『許可』も掠め獲ったンデスヨネ。
ワカリマス。
日向の体温を背中に感じながらドライブするコト15分。
エンジンを止めた由仁は、小洒落た二階建てのアパートを見上げてヘルメットを脱いだ。
「ココでいーのー?」
「…ハイ。」
続いてヘルメットを脱ぎ、髪を軽く整える日向の声と表情は固い。
さっき部室でほんの少しスキンシップを図ってから、彼女はあからさまに警戒を強めている。
(やっぱ、カーワイー…)
ヘルメットを受け取りながら横目で盗み見ると、視線に気づいた日向が眉根を寄せて顔を背けた。
でも、耳赤いよ?
本当に可愛い。
警戒心の鉄条網をすり抜けて、小さな手を握る。
日向の動揺に気づかないフリをしてニコリと微笑んだ由仁は、彼女の手を引いてアパートに向かって歩き出した。