嗤うケダモノ
弐
広いよ。
掛け軸や活け花が飾られた床の間がある、畳の部屋があって。
セミダブルのベッドが2台並んだ洋室があって。
和洋室ってヤツだよ。
しかも、大浴場があるクセに、部屋のバスルームも豪華だよ。
夜になれば、大きな窓から都会にはない星空が拝めるハズだよ。
こんな宿泊スペースに一人ボッチとか、寂しすぎマセンカ?
このステキすぎる環境を、すぐ傍にいる愛しのバニーちゃんと分かち合えないとか、ヒドいと思いマセンカ?
てか、このシチュエーションでバニーちゃん食えねェとか、あり得ねーンじゃねーデスカぁぁぁぁぁ??!!
(絶対、隙を見て掻っ攫ってやろー。)
鬼ババは仕事があるしー。
時間もたっぷりあるしー。
Let′s ポジティブシンキング☆
荷物を置いて一通り室内を見回した由仁は、スッカリ上機嫌になっていた。
とりあえず… どーしよ?
まだ日は高いし…
旅館探検?
土産物屋巡り?
いきなりひとっ風呂浴びちゃうか?
ナニをするにしても、日向がいなくちゃ始まらない。
隣の部屋にいる彼女を、今すぐ迎えにいかなくちゃ。
由仁は明かり取りの磨りガラスがはめられた洒落た客室ドアを、鼻唄混じりに開けた。