嗤うケダモノ
迷惑千万デスネ。
ソーデスネ。
今はまだその程度で済んでいるが、いつ敷地内に不法侵入しようとするバカが現れるかわからない。
警察沙汰にでもなろうモンなら、ますます噂は一人歩きし、普通に温泉を楽しみたい客の足は遠退き、怪奇現象を期待する人間ばかりが集まるキワモノ旅館になってしまう。
旅館経営に影響出まくりデスヨネー。
「…
以前お話を伺った時より、事態が深刻化してますね。」
瑠璃子が煎れてくれたお茶を一口啜った杏子は、眉間に皺を寄せて言った。
えぇ…、と困惑しきった様子で頷いた瑠璃子が、睫毛を伏せて俯く。
…
ナニ?
このビミョーな間。
まだナンカあンの?
「先生…
ソレだけじゃないンです。
実は…
変なモノを見た、なんて若いコが言い出して…」
ナンカあった─────!!
『変なモノ』キタ─────!!
ナニソレ、詳しく。
早く早く。
当然というか、必然というか…
由仁の瞳がキラキラと輝きだす。
杏子よりも熱心に耳を傾け始めた由仁を横目でチラリと確認して、日向は笑いを堪えた。