嗤うケダモノ

ハイ。
まずは、いつ、誰が?


「一年ほど前から働いてくれてる街から来た若い仲居サンが、私に相談してきたンですの。
夜、従業員寮に帰る途中…
その… 見た、と…」


うんうん。
ナニを見たの?


「ユラユラと動く光を…
怖くなって、ソレがなんなのかは確認できなかったそうです。」


なるほどなるほど。
ドコで見たって?


「母屋と申しますか…
以前からあった建物を、今は従業員寮として使用しているンですが…
ソコの… その…」


焦らさないでよ。
ソコの、ドコ?


「昔… 昔の話ですよ?
座敷牢だった部屋の、窓の辺りで…」


「っ?!
座敷牢?!」




あーあ。
やっぱ食いついた。
ジンさんが食いついたー。

座敷牢とは、私宅内に設けられた牢屋だ。

罪人や狂人など、家にとって不名誉になる者を監禁し、一族総出で隠蔽し続けるための部屋。

与●松的な人が入れられていた、昔はさして珍しくもなかった名家の暗い秘密ってワケだ。

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