嗤うケダモノ

だが青沼家に座敷牢があるコトは、村では衆知の事実だった。

青沼家は、代々集落の長の家系だから。
戦前や戦後の混乱期くらいまでは長自らが自警団を組織し、消防隊や警察の役割まで担っていたから。

そりゃあネー。
村でトラブルがあった場合、お巡りサンが山越えてやって来るまで、待ってらンないよネー。

そんなワケで、一時的な留置場となっていた青沼家の座敷牢は、秘密どころか誰もがちょいちょい立ち寄るような、非常にオープンな場所だったらしい。

そしてその座敷牢も時代の流れと共に使用される機会もなくなり、今では絶賛放置プレイ中で…


(んー…
オカルト要素は薄いナー…)


由仁は不服そうに突き出した下唇を弄りながら思っていた。

与●松が入ってねーンじゃ、坊主も
『キ●ガイじゃが仕方がない』
とか言わねーよ。

連続俳句殺人も起きねーよ。

ユーレーが出そうな要素が、全く感じられねーよ…

じゃあ、なんだというのだろう?
仲居サンが見た光ってのは?


「…
使わなくなった座敷牢で、ダレかがナニカをしてたとかー?」


「それはあり得ません。」


誰に聞かせるわけでもないような由仁の小さな呟きに、瑠璃子がすかさず答えた。

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