嗤うケダモノ
(紛失は、消失じゃない…)
なくなったと思われていたヨコタ先輩の携帯電話は、Aくんが持っていた。
今回だって、紛失していると思わせておいて、ダレかが鍵を隠し持っている可能性だってある。
そうなると開かずの座敷牢は、特定のダレかだけが開けられる座敷牢というコトに…
日向は自分の推測を確かめるように、真っ直ぐに由仁を見つめた。
由仁もまた日向を見つめ、妖しく艶やかに嗤っていた。
「このままでは、お客様どころか従業員たちまで逃げ出してしまいます!
先生のお力でなんとかしていただけませんでしょうか。
主人は必ず説得しますから。
えぇ、必ず!
どうか、先生のお力で…
どうか、どうか…」
そう言って気の毒になるほど頭を下げてから、瑠璃子は客室を後にした。
自殺した支配人。
発狂した支配人の妻。
降って湧いたような『一族まとめて狐に取り憑かれてる』なんて噂。
ネットに流された写真。
開かずの間のようで開かずの間じゃないかも知れない、座敷牢で目撃された謎の光…
さぁて、ね。
コレ、先生のお力でなんとかなるモンなの?
教えて───。
張本人の杏子センセ───。
身内だけになった部屋で、自然と杏子に視線が集まった。