嗤うケダモノ
「で?
どーなのー?」
「どーもこーも…
なーんにもナイよ。
サクっとお祓いゴッコすれば片付く、気のせい案件だと思うケドねェ…」
間延びした由仁の問い掛けに、杏子は片手で肩を揉みながら答えた。
どうやら杏子の霊感アンテナには、アヤシイ気配は引っ掛からなかったようだ。
でも…
コッチはどうカナ?
由仁はさらに問い掛ける。
見えない存在に向かって。
「ジーチャンはー?
どんなカンジー?」
「儂のほうもサッパリじゃ。
おぬしと儂以外の狐も、この辺りにゃおらんぞ。」
ハイ。
見えない存在は実にアッサリ可視化。
風を纏って空中に現れた空狐はヒョイと座卓に飛び乗り、お茶請けの温泉まんじゅうに手を伸ばした。
ナニ?
いたの? 話、聞いてたの?
「オジーチャン…
一緒に来てたの?」
日向が大きな目をパチクリさせて言った。
でも、そんなコト言いながらも空狐のために新しいお茶を用意するあたり、イイお嫁さんになれそーですな、日向サン。