嗤うケダモノ
由仁は日向の腰を抱き寄せ、長い指で彼女の顎を掬い上げた。
唇で、額に触れて。
瞼に触れて。
頬に触れて。
唇に、触れて。
もっと深く。
深く‥‥‥
…
…
…
なんか視線を感じマスケド?
ガン見レベルの熱視線デスケド?
全っ然、集中デキマセンケド───?!
(もー…
いったいなんなの?)
由仁は日向を抱きしめたまま顔を上げ、視線の出所辺りを睨みつけた。
男がいる。
上下スウェットというラフな格好をした、やたら細い男が。
そういえば昨日も、ココの旦那にガン見されたっけ。
失礼な旅館だな、おい。
でも、昨日の孝司郎の様子とは全く違う。
なんつーか…
満面に歓喜の色を浮かべて…
「戻ってきてくれたンだね!!」
よく通る高めの声で叫んだガン見男は、驚く由仁と日向目掛けて駆け寄ってきた。
しかも、両腕を広げてやがりマスYO!