嗤うケダモノ
「千鶴子サンって、ねー。
俺を生んだ人。」
由仁は指で左の目尻にあるホクロに触れ、唇の端を歪めて笑った。
すると、目を皿のようにした日向の小さな口から…
「え…
えええええぇぇぇぇぇ??!!」
絶叫が放たれる。
ちょ… 勘弁してよ。
また仲居サンSがスっ飛んで来ちゃうでショ?
由仁は素早く日向の口を塞いだ。
もちろん、唇で。
さっきは進撃の清司郎にジャマされちゃったし。
つい今しがた、その瞳に煽られたばっかだし。
コレは不可抗力デス。
(ナニコレ? ナニソレ?
どゆコト、どゆコト、どゆコト───?!)
目眩を覚えるほど深く甘くなっていく口づけと、なんの気ナシにもたらされた衝撃の事実に、日向は翻弄されていた。
先輩を生んだのが、その千鶴子という女性だったとしたら。
好きな人とドッカで結婚したハズなのに、なんでこの辺の川原で死んでンだ?!
杏子さんが先輩を拾ったのは夏真っ盛りの8月半ばだったって言ってたから、失踪が7月初旬だとすると、空白の一ヶ月ちょいが発生してねーか?!
妊娠期間もオカシーよ!
オトーサンはどーしたよ!
てか、キスで窒息死寸前デスYO───!!!