嗤うケダモノ
眠っている様々な謎が発掘できるとすれば、この真新しい旅館からなんかじゃない。
18年前にあった環境からだ。
だからとりあえず、母屋にあるという座敷牢を霊査(笑)することにした。
杏子はもちろん、由仁と日向も同行する。
例の『衝撃の事実』は、瑠璃子が去って三人で朝食を摂っている時に、杏子にも明かした。
「おかしな話だね。
じゃ、失踪時、千鶴子は既に妊娠してたってのかい?」
お一人様用の鍋でグツグツ揺れる湯豆腐をれんげで掬いながら、杏子が眉を顰める。
「おかしいデスヨネー?
一ヶ月後に出産したなら、もうお腹もずいぶん大きかったハズですし…
誰も気づかなかったなんてコト、あり得るのカナ…」
鮭の西京漬けの身をほぐしながら、日向が首を傾げる。
「てか、その一ヶ月のタイムラグが、そもそもおかしいしネー?
あ、ヒナ、生ハム苦手ー?
コレと交換するー?」
にこやかに笑った由仁が、日向に出汁巻き卵が乗った小皿を差し出す。
ありがとうございます、ジン、私もコレ交換して、しょーがないなー、じゃソレちょーだーい…
いやぁ…
結構ヘビーな話題だと思うケド…
和やかにメシ食ってンね。