嗤うケダモノ

「で?
おかしなコトが満載だケド。
それでもあの時川原で死んでたアンタの母親が、千鶴子だって言うのかい?」


膳の上をキレイに平らげて箸を置いた杏子は、低い声で由仁に訊ねた。

湯呑みに口をつけた由仁が、彼女にチラリと視線を送る。


「うん。そー。」


吹けば飛びそうな軽い返答だ。

だが、断言。


「根拠は?」


「もう一人の俺が、その名前、言ったから。」


「「『もう一人の俺』?」」


由仁の言葉に、杏子どころか大人しく口を噤んでいた日向までもが身を乗り出す。


「先輩、ソレってもしかして…」


「九尾の狐かい?
アンタ、九尾と話せンの?」


もしも九尾の狐にあの時の事情を聞けるなら、最短ルートで謎が解けンじゃね?コレ。

だが由仁は…


「んーん。ムリ。
アイツ、もう俺になってっから、そーそー出て来ねェと思うヨー。」


冷めたお茶を啜りながら、ノンビリとのたまった。

…使えねェェェェェ!!

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