嗤うケダモノ
「こちらが座敷牢として使っていた部屋です。」
少し腰を屈めた孝司郎が、やはり無愛想に言った。
なんの苦労もなく手の届く天井だ。
杏子と日向はともかく、男性では普通に立っていられない。
由仁なんて腰どころか膝まで曲げて、完全に中腰状態デスYO!
「中はどうなっているンですか?」
「畳敷きになっています。
当時は布団や樋箱… ポータブルトイレと言うんですか?
そういう生活用品も入れてました。
今はナニもありませんがね。
大人しく座っているぶんには、快適な環境だったと思いますよ。」
杏子の問い掛けに、横柄且つ饒舌に応じる孝司郎。
だけどネー?
なんかネー?
言い訳じみて聞こえるよ?ソレ。
ヤマシーコトはありません、みたいな?
ワルイコトなどしてません、みたいな?
ココにはナニもありません、みたいな…
クドクドと続く孝司郎の説明を聞き流しながら、由仁は座敷牢に近づいた。
扉自体は木で出来ているものの、閂や閂持桟、閂鎹などは全部鉄製。
しかも接合部分はガッツリ溶接されている。
そして…
かなり大振りな錠前が掛かっていた。
所謂、和錠というヤツだ。