嗤うケダモノ
紛失したのは、このアンティークな錠前の鍵というワケか。
そっと手を伸ばしてその錠に触れた由仁は、鍵穴を確認してから振り返った。
「ココは無関係でしょう。
ずいぶん前から開けることもできませんから。
その妙な光も、 違う場所から」
「ねー、この扉、壊しちゃダメなのー?」
「っ」
延々と続く独壇場を遮って由仁が声をかけると、孝司郎は恰幅のよい身体をビクリと揺らして硬直した。
なんともわかりやすい動揺だ。
「こ…
壊す必要があるとは思えんな!
中にはナニもナイのだから!」
語気を荒らげて返答するものの、孝司郎は決して由仁と目を合わせようとしない。
それどころか、急激に顔色が悪くなり、額には脂汗まで滲ませている。
冷めた眼差しで孝司郎を眺めていた由仁は、不意に口角を持ち上げて妖しく嗤った。
「ふーん?
そーまで拒否されると、余計入りたくなっちゃうナー?
ナニが隠されてンだろナー?」
「っっ」
あからさまな挑発に、孝司郎は再び硬直し…
痙攣を疑うほどに、全身をガタガタと震わせ始めた。