嗤うケダモノ
「先輩…
大丈夫なンですか?」
例の紙を手渡しながら、日向は由仁の耳元で囁いた。
「だいじょぶ、だいじょぶ。
てか、ちゃんと話合わせてね?
スンマセーン。
耐熱皿も持ってきてー。」
前半の囁きは日向へ。
後半はお憑かれの二人へ。
由仁の口調も艶っぽい微笑みも 自信に満ち溢れている。
コレは…
ガチなのかも知れない。
お香を焚いて
皿の上で紙を燃やして
霊が帰るよう、強く祈って
お香の灰と紙の灰を混ぜて…
由仁の指示通りにサクサク進んでいく『お祓い』を、日向は固唾を飲んで見守った。
「後は、今日中にこの灰を川に流しに行ってクダサイ。
二人一緒にネ。
で、帰ったら日本酒を少し呑んで身を浄めてクダサイネー。」
「お… おぅ。
わかった。」
「それと、コレ。
差し上げマス。」
かしこまった態度でコクコク頷くタケルに、由仁はポケットから出したモノを手渡した。
あ。
その、ヘロヘロになった半紙は…
「祓い屋やってる身内に譲ってもらった、霊験あらたかな護符デス。」