嗤うケダモノ
首を傾げた瑠璃子が言う。
「まぁ、お見苦しいトコロを…
誰か戻ったのかしら?
あら、でも、仲居なら草履だし…」
そーゆー問題なの?コレ。
仲居サンでも板前サンでも、片方だけってのはなかなかねェだろ。
素早く自分の靴を履いて土間に下りた由仁は、謎のスニーカーを拾い上げた。
最もオーソドックスな形の、白のコンバースだ。
サイズ的には子供か女性。
ソールがあまり減っていないにも関わらず、布生地部分のほつれや劣化は激しい。
そして…
至るトコロに付着した、泥とドス黒いシミ…
「寄越せ!!!」
悲鳴にも似た声が上がると同時に、由仁の手からスニーカーが奪われた。
全員の視線が集まる。
ソコには、追いついてきた孝司郎が立っていた。
唇まで青ざめ、由仁から奪い取ったスニーカーを隠すように抱え込んだ孝司郎は…
「なんで… なんでココに…
おまえは… おまえは…
なんでなんでなんでなンデ…」
…
壊れかけのRadioってか、完璧にイカレたRadioになっちゃった。
孝司郎の呟きは、掠れすぎて、早口すぎて、理解し難い以前に聞き取れない。