嗤うケダモノ
「あの女には会えん!
ハハハ、会えんゾ!
貴様にはナニもできん!」
杏子の一言で、孝司郎は本格的に壊れた。
狂った哄笑を上げ続ける夫の腕に、今にも泣き出しそうな瑠璃子が縋りつく。
「あなた!やめて!
しっかりして!」
「ハーハハハハハ!
あの女は病院だ!
キ●ガイなンだ!
家族にすら会えんし、話もできん!
ハハハ、ハハハ、貴様にできる事なんぞ、ナニもないゾ!!!」
…
いやいや。
今、アナタも立派なキ●ガイだから。
(コレ… どーなンの?
オトシドコロあんの?)
両手を胸に当ててこの心臓に悪い一幕を注視していた日向は、土間に下りたせいで、いつもより目線の高さが合う由仁の顔をチラ見した。
あれ…
シレっとしてる…
あれれ… 杏子さんは…?
シレっとしてる…
…
あれぇぇぇぇぇ?!
ナンデそんなにシレっとしてンの?!この親子?!
実にシレっとしたまま、杏子が再び口を開く。
「そうですか。
では、小川の向こう岸にあったのは稲荷神社…
つまり、狐を祀っていましたか?」