嗤うケダモノ

裏庭で目撃された謎の光は、幽霊の仕業でも呪いのせいでもない。

由仁はそう確信していた。

鍵を隠し持っている『誰か』が、ある『目的』のために、座敷牢に入っていたのだ。

後ろめたいコトがあるから夜中にコッソリ決行したのだろうが、ソレが完全に裏目に出て、逆に人の目を引く結果になってしまった。

その『目的』も、ある程度推測できる。

おそらくソレは、見られてはマズいモノの捜索と、その処分。

だから一度目の光は、ネットに煽られたオカルトオタクが旅館周辺に出現しはじめた頃に目撃された。

後先考えない過激なヤツらに不法侵入され、座敷牢を発見され、あまつさえ扉を壊して中を見られてしまうコトを怖れたのだろう。

そして、瑠璃子までもが目撃した二度目の光は…


(俺の顔見て、焦っちゃったンだろーナー…)


由仁は指で唇を弄りながら、少し俯いて苦笑した。

そう。

千鶴子によく似た人物が現れて、驚き、居ても立ってもいられなくなったのだろう。

それで、前回ヘタ打って従業員に見られたにも関わらず、また同じコトを繰り返した。

そーでショ? 『誰か』サン?
てか、ぶっちゃけ、孝司郎サン?

ソッチは推測っつーか、確実だろ。

アンタほどわかりやすい人、なかなかいないと思うよ?


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