嗤うケダモノ
「…
ソレ、千鶴子サンが、特定の誰かに、って意味ですよネ?」
「…
そう。」
そう、日向にだってわかってる。
きっと千鶴子はココにいた。
今の二人と同じように。
そんな切羽詰まった状態で、彼女が孝司郎じゃない『誰か』にメッセージを残すとしたら。
その『誰か』は、彼女と親しい人物だろう。
彼女を知った上で、痕跡を探してくれるような…
腕を組んで、しばらく考え込んで。
軽く頷いてから、腕をほどいて。
日向は、確信に満ちた迷いのない一歩を踏み出した。
「あのね、紙と書くモノはあったと思うの。
退職願が送られてきたっつってたじゃん?
アレはきっとココで書かされた」
「紙には書きませんよ。
見つけやすいコトこの上ナシじゃないっスか。
オッサンに証拠隠滅されちゃうのは、想定内だっただろうし。」
未だに下ばかり探し回っている由仁の言葉を、対照的に前を見据えてスタスタ歩く日向が遮った。
この辺カナ?
もう一歩後ろカナ?
お。
ココだよ、絶景スポット。
で、ひょいと上を見上げてみましょうか…
「先輩、ありました。」