嗤うケダモノ
「うっそ?!」
由仁は勢いよく顔を上げた。
見つけたの?!
てか、早っ?!
「ドコ、ドコー?」
「天井です。
男の人には見つけにくいカモ。
腰を屈めてると、なかなか上を見上げたりしませんから。」
なるほど。
フツーに探しても、見つかりにくい。
だが、自分を千鶴子の立場に置き換えるコトができたなら、簡単に見つけ出せる。
考えたな。
「ヒナ、天才ー。」
「フフフ…
基本的なコトだよ、コバヤシ君。」
「え? コバヤシ君なンだ?
ワトスン君じゃないンだ?」
軽口を叩きながら日向の傍に寄った由仁は、無理な体勢で天井を仰ぎ見た。
微かに。
でも、確かに。
木の黒ずみに隠れるように、千鶴子の思いは息づいていた。
読み進むにつれ、日向の唇が震えだす。
そして…
由仁の表情が消えていく…
ふと視線を移すと、その場所からは、窓の外に広がる夾竹桃が見えた。