嗤うケダモノ

頑丈そうに見えた座敷牢の扉が勢いよく倒れ、辺りに地響きを轟かせた。


(やってしまいおったか…)


浮いていた空狐は地に降り立ち、空中に現れた杖を小さな手で握り取った。

杏子には悪いが、やっぱり由仁はバカだった。

一瞬で終わらせてやろう。

苦しまずにすむように。

自らが手にしたチカラで自らを滅ぼす、なんて自殺のような真似をせずにすむように。

静かで冷たい殺気を漂わせる空狐の前に、モウモウと埃が舞い上がる座敷牢の中からバカが現れる…


「おのれ… 許さん!」








あら?

バカ? てか、武士?

拳を震わせて。
鬼の形相で。

怒りに我を忘れて出てきたのは、戦闘形態武士モードを起動させた日向だった。

うん…
ソレはソレで、バカには違ぇねェわな。

ナニ?
まさか扉ブっ壊したの、日向サンなの?

火事場の馬鹿力ってヤツなの?

バカなだけに?

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