嗤うケダモノ
確かに、扉は由仁が奮った九尾の妖力で破壊された。
うん、想定内。
だが出てきたのは、荒ぶる武士と、その家臣。
ソコ、完全に想定外。
予想を覆されて言葉も出ない空狐に歩み寄った杏子は、彼が手にした杖をヒョイと奪い取った。
そしてそのまま、ソレでトントンと自らの肩を叩く。
「ほーら、ネ。」
空狐が見上げた杏子は、得意満面で片目を閉じていた。
そうだね。
彼女の言った通りだ。
由仁はバカじゃなかったよ。
いや、充分バカだけど。
全てを台無しにするようなバカじゃなかったよ。
殺さなくてよかった。
よかった‥‥‥‥‥
…
でもネー…
こんなに完膚無きまでに言い負かされてちゃ、大神狐としての威厳の方が台無しじゃねーか。
「返せ。
そりゃ、肩叩きじゃないぞぃ。」
飛び上がった空狐は、杏子から杖を奪い返してプイとそっぽを向いた。
なんつーか…
口、尖ってマスヨ。
やっぱ、見た目と違わず、カワイージーチャンだ。