嗤うケダモノ
玖
取り乱し、絶叫し、ついでに足を踏み外す。
急な階段から転がり落ちた孝司郎は、慌てて傍に寄った瑠璃子の足に縋りついた。
「あなた?!
先生、これはいったい…」
「許してくれ!
そんなつもりじゃなかったンだ!
瑠璃子ぉぉ助けてくれぇぇぇ…」
…え?
早くも自白?
小さくなってガタガタ震える孝司郎をジっと見つめた由仁は…
輝く瞳をもっとキラキラさせて、辺りをキョロキョロ見回した。
「出たの?
千鶴子サンの幽霊?
ドコ?ドコー?」
「…
出たっつーか…」
半狂乱となった孝司郎に気圧されて武士モードを解除した日向が、ポツリと呟く。
「先輩を、千鶴子サンの幽霊だと思ってンじゃないスか?
またガン見してたし。
似てるらしいし。
先輩、今、人間離れしてるし。」
「えー…
まさかでショ…」
困惑の表情を浮かべた由仁が、腕の中から見上げてくる日向とダンゴ虫状態の孝司郎に、交互に視線を送る。
すると、ビクビクした様子で顔を上げた孝司郎と、バッチリ目が合った。
…試してみましょーか?