嗤うケダモノ

あらら。
セリフの最後の暴言が、どんどんヒドくなってますヨ?杏子サン。

けれど、まだ決め手に欠けるみたい。

追い詰められた孝司郎が、震えながらも最後の足掻きを見せる。


「確かに千鶴子を閉じ込めた!
遺体を処分させたのも事実だ!
ソレは俺が悪かった!
後藤とカミサンを巻き込んだのも、俺が悪かった!
だがな?千鶴子が死んだのは事故だ!
後藤と揉み合って、勝手に足を滑らせて落ちたンだ!
殺したわけじゃない!
大体、千鶴子が逃げたりしなければ」


「んー…
でも、千鶴子サンが急いで逃げなきゃなんない状況を作ったのは、オッサンでショ?」


長い指に毛先をクルクル絡めながら小首を傾げた由仁が、ノンビリと孝司郎の責任転嫁的言い訳を遮った。

隈取りもゴールデンアイもとっくに消え失せてているが、孝司郎は顔を強張らせて黙りこむ。

孝司郎に聞こえる由仁の声は、千鶴子の声。
彼を断罪する、死者の声。

言い逃れなど、できるはずもない…


「オッサン、千鶴子サンのお腹の赤ちゃん、殺そーとしたンでショー?」


(なんてコト…)


杏子はギリリと奥歯を噛みしめた。

許せない。
殺してやりたい。

子を望めない自分だからこそ、尚更。

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