嗤うケダモノ
「なんか申し開きはあるかい?」
杏子の冷たい声に、孝司郎はナニも答えられずに項垂れるだけ。
それは誰の目から見ても、罪を認めたも同然だった。
「そんな…
呪いは全て、主人のせいだったなんて…」
口元を手で覆った瑠璃子が、震える声で言った。
って、いやいや… 瑠璃子サン?
アンタも、そんな他人事みたいに言ってる場合じゃないよ‥‥‥ネ?
次はコッチを片付けマスカ。
「ココには狐の呪いなんて存在しませんよ。
瑠璃子さん、アンタが一番よくわかってるでしょう?」
「え… 私…
先生、いったいナニを仰っているンですの?」
杏子に刺すような視線を向けられた瑠璃子が、オロオロと身体を揺らす。
「迫真の演技じゃないか。
罪悪感につけこんで後藤を自殺に追いやり、奥さんを発狂させ、呪いをでっち上げて私たちをココに招いたのは、アンタだろう?
…
真実を暴きたかったのかい?
川村千鶴子の実の姉の、池脇瑠璃子(イケワキ ルリコ)さん?」
忌憚なく核心を突いた、杏子の一言。
目を見開いた瑠璃子が、一瞬、迷うように俯く。
だが顔を上げた時、もう彼女は献身的に働く旅館の女将ではなかった。