嗤うケダモノ

瑠璃子は泣いた。
己を恥じた。

そして涙が止まると同時に、立ち上がった。

千鶴子に会いにいこう。
健気で優しい妹に、少しでも姉らしいコトをしよう。

そして、一緒に暮らすンだ。

今からだって遅くはない。



けれど…

もう手遅れだった。

手紙に書いてあった住所には、赤の他人が住んでいた。

病院に連絡してみたが、母親は既に亡くなっていた。

最後の望みに縋るように、就職先であるクリーニング店を訪ねたが…

千鶴子はもういなかった。

誰かと駆け落ちしたのかも?なんて事情を聞いて驚く瑠璃子に、千鶴子の上司だったという男が段ボール箱を差し出した。

布団や衣類などは千鶴子の希望通り処分したが、コレはどうするべきか扱いに困っていたと、上司は頭を掻いた。

一体なんだというのだろう…

箱を確認した瑠璃子は再び驚愕し…
違和感を覚えた。

中にあったのは、額に入った幸せだった頃の家族写真、瑠璃子からの手紙、そして母親の位牌…

あの千鶴子が、こんな大事なモノを置いていくだろうか?

処分して欲しいだなんて言うだろうか?

長い間無視を決め込んでいた自分に手紙を送り続けてくれた、情に厚いあのコが…

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