嗤うケダモノ

あのコが幸せになっているのなら、それでイイ。

でも、そうじゃなかったら?
この違和感が本物だったら?

千鶴子は今ドコに…

考えた末、瑠璃子はホステスを辞めた。
そして、千鶴子の姉だというコトを隠し、彼女が出入りしていたド田舎の温泉宿で仲居として働き始めた。

だって、あのコの身にナニカが起こったのなら、最後に姿を見せたというこの集落が怪しい。

瑠璃子は、千鶴子が消えた夏の話をさりげなく周囲に聞いて回った。

だが出てきたのは、ベビー用品も持たずに赤ちゃん連れでやって来たイカレ女が、
『死体見たー 女が死んでたー』
なんて騒いだ話だけ。

しかも、結局勘違いだったそうな。

迷惑千万だな、おい。

そこで瑠璃子は手を変えて、クリーニング業者の話をさりげなく周囲に聞いて回った。

すると、千鶴子の名が出た。
器量良しで好感の持てるコだったと、皆が口を揃えた。

だが、ソレだけ。

集落での人間関係を聞こうとすると、誰もが
『内輪のコトを喋ると、長様に叱られるから』
なんて言った。

は?ナニソレ?
長様、ワロス。

この集落は、そんな場所。

言わば、宿の主人である青沼孝司郎の王国。

それでも瑠璃子は、長様(笑)に左右されない情報源を見つけた。

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