嗤うケダモノ
瑠璃子は孝司郎に取り入り、後妻の座を手にした。
そして、瞬く間に旅館を発展させた。
それに伴い、都会から職を求めて若者がやって来る。
交通網も整備される。
大型量販店もできる。
集落には、新しい風が吹き荒れた。
だが、年を重ねると順応性に欠けてくる。
慣例や習慣を大切にする。
昔から集落に住んでいた年齢層の高い者たちは、変わらず孝司郎に忠実だった。
どんなに集落が栄えようと、絶対王政は終わらないのだろうか。
重ねてきた努力は、全て無駄だったのだろうか。
このまま、千鶴子の行方はわからないままなのだろうか…
瑠璃子は落胆した。
けれど、努力は実っていた。
意図しなかったカタチで。
身を粉にして旅館を発展させた瑠璃子は、王を献身的に支える妃として、集落の人々が忠誠を誓う対象となっていた。
余所者としての扱いから尊敬を受ける立場に変わった頃、瑠璃子はあるコトに気づいた。
散歩のついでの山菜摘みにいつも付き合ってくれる支配人の後藤は、裏山の特定の場所には絶対に近付かないのだ。
瑠璃子が行こうとしても、必死の形相で止める。
理由を聞いても、青ざめて口を濁す。
ナンダ?コレ。
知られたくないモノでもあンの?
てか、付き合ってくれてると思ってたケド、コレ、見張られてンじゃねーの?