嗤うケダモノ



は?

ナニアレ?狐?

うん。
尻尾は多いケド、フォルムは狐。

だが、普通の狐じゃない。

美しい毛並み。
黄金色の瞳。
先に向かって、その瞳の色にグラデーションしていく九本の豊かな尾。

やけに神々しく、けれど恐ろしい、白銀に輝く巨大な化け狐が千鶴子の傍にいた。

千鶴子は化け狐に、ナニカを訴えているようだった。
『お願い』という微かな声が聞こえた。

彼女はまだ生きていたのだ。

どうしよう?
もう一度殺して埋める?

んなバカな。
助けなければ。

でも、どうしよう?
化け狐がコワくて、一歩も動けない…

生い茂る木々に身を隠し、恐怖に戦き、ただただ逡巡していると、化け狐が鋭い牙を剥き出しにして千鶴子の腹を切り裂いた。

そして、ドクドクと血が溢れ出る裂け目に口を突っ込んで…

木にしがみついたまま、後藤は意識を飛ばした。
ついでに失禁した。

なんだかズボンが冷たいナー、なんて意識を取り戻した時には、川原の様子は変化していた。

横たわる千鶴子を挟んで対峙する、化け狐と知らない女。

ナニコレ?
ナンデコーナッタ?

あの女はドコから湧いて出た?

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