嗤うケダモノ
後藤の懺悔を聞くうちに、瑠璃子の心は冷えていった。
怒りが消えたわけではない。
血も凍るような、冷たい怒りに変わっただけ。
だって、あんまりじゃない?
苦労に苦労を重ねて、それでも誠実に生きて、その結果がこんな無惨な最期だなんて。
わかっている。
自分だって同罪だ。
千鶴子に肉親がいると、ナニかあれば必死で捜す人間がいると孝司郎が知っていれば、監禁なんて思い切った真似は、そもそも出来なかっただろう。
身勝手で千鶴子を妬み、連絡を断ち、長い間放ったらかしにしていなければ、彼女はこんな死に方をせずに済んだかも知れないのだ。
ごめんね、千鶴子。
本当にごめんね。
許してはくれないだろうけど。
それでも。
私があなたの恨みを晴らすから。
瑠璃子は、蹲る後藤に優しく語りかけた。
『そんなコトがあったの…
苦しんでいたのね、後藤さん。
あなたが悪い訳じゃないわ。』
『瑠璃子さん…』
『でもその女性は、あなたが直接手を下したと思って、恨んでいるかも。
実は以前からあなた傍で、あの人を見かけていたのよ。』
『っ?! そんな?!』
『くれぐれも気をつけてね。
私も妙なコトに気づいたら、すぐあなたに知らせるようにするわ。』