嗤うケダモノ

後藤は咽び泣きながら、瑠璃子に感謝した。

笑えるくらい、バカな男。
掌の上だとも知らずに。

折に触れ、瑠璃子は後藤に忠告した。

気遣う言葉の裏に、復讐の刃を隠して。

『今日も山で見たわ
後藤さんは、もうあの辺りには行かないほうがイイわ』
『後藤さん、肩にナニかついて…
まぁ、コレ… 動物の毛…?
大丈夫よ、気をシッカリ持って』

用を捻り出しては後藤の家を訪れ、彼の妻にも忠告した。

気遣う言葉の裏に、復讐の刃を隠して。

『犬でも飼い始めた?
なんだか獣臭い気が…』
『きゃ?! 今、窓の外に…
どうしましょう、近づいてきてるみたい…
危険を感じたら、すぐに連絡してね?』

後藤はみるみる衰弱していった。
妻はみるみる病んでいった。

あぁ、痛快。

苦しめばイイ。
のたうち回ればイイ。

でも、そろそろトドメを刺す頃合い。

瑠璃子は血に染まったシャツを持ち出し、夜中にコッソリ後藤の家の門扉にかけた。

そのシャツは千鶴子のモノ。

後藤の話を聞いてすぐ、瑠璃子は人目を盗んで千鶴子の遺体を掘り出していたのだ。

千鶴子は既に、骨だった。

可哀想な、可哀想な、千鶴子。

私が心を込めて弔うから。
あなたが身につけていたモノは、私に預けてね…

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