嗤うケダモノ
千鶴子のシャツは、瑠璃子が企んだ通りの効果をもたらした。
最初にシャツを発見した後藤の妻は狂った。
力任せにシャツを引き裂きながら喚き散らす妻を見て、後藤は正常な判断力を失くした。
そして、首を吊った。
千鶴子を埋めた場所に立つ木に縄をかけて。
贖罪のつもり?
笑わせないでよ。
そんなコトで復讐は終わらない。
まだ残っているもの。
大罪人である、孝司郎が。
だが、簡単にはいかないだろう。
後藤や彼の妻とは違い、孝司郎は化け狐のコトを知らない。
自分が呪われているコトを知らないのだ。
つまり、後藤の時と同じように『幽霊見たヨ☆』なんて言ったトコロで、ちょっと怯える程度だろう。
自殺に追い込まれるほど、恐怖を煽ることが出来るとは思えない。
じゃあ、どうする?
後藤の妻のおかげで流れた『狐に呪われてる』という噂も、一笑に付されたし。
今さら警察に駆け込んでも、イイトコ中途半端な有期刑にしかならないだろうし。
どうする?
あぁ、イイ考えが浮かばない。
協力者でもいればいいのに。
協力者‥‥‥
あれ?
いるよネ、協力者。
ナニやってンの?18年間も。
ナンデ来ないの?
千鶴子に復讐を託されたという、化け狐は。