嗤うケダモノ
「カズヨさんが一緒だと姉弟とか、二人でいると年の差カップルとか、みんな勘違いすンだよネー。」
「あー… そーっスね。」
なんせ年齢不詳親子だから。
旅館に着いた時の仲居サンSの反応を思い出した日向が、相槌を打ちながら由仁を見上げる。
だが彼はもう、日向を見ていなかった。
妖しく微笑みながら、瑠璃子を見つめていた。
由仁の微笑と瑠璃子の鋭い眼差しが交錯する。
「なのに瑠璃子サンは、すぐに『息子さんですか?』って言ったの。
だから、ただ誰かに紹介されたってワケじゃなく、杏子さんどころか俺のコトまで調べた上で、ウチに来たンじゃねーカナって。」
「…それだけ?」
「んーん。
後は、名前。」
「名前?」
「そー。
瑠璃子と千鶴子。
オオルリとツル。
タイプは全然違うケド、どっちもキレーな鳥だヨネー。
これだけ出揃って、全部偶然だってほーがミラクルじゃね?」
おぉぉ… 先輩、スゴいっス!
ジン、天才だよ! よっ!名探偵!
フフ… 褒めて、褒めてー
先輩なら蝶ネクタイと短パンもお似合いっス!
えー… ソレはヤだ…
キャっキャと騒ぎだした三人を、瑠璃子だけは黙って眺めていた。