嗤うケダモノ

拾弐


「はぁぁぁぁぁ…」


深い溜め息を耳元で聞いて、日向は思わず吹き出しそうになった。

溜め息の主は、由仁。
そして清司郎は、たぶん由仁の苦手なタイプ。

盛大にめんどくさがってンだろな。
関わりたくなーい、とか思ってンだろな。

一応、アンタのオトーサンらしいケドネ?!

由仁が醸し出す『もー勘弁して』オーラは、当然、渦中の人物たちには届かない。


「清司郎…」


茫然と立ち尽くす清司郎を見上げた孝司郎が、青ざめた顔で呟いた。

刈込鋏を持っているということは、清司郎はいつものように母屋の裏庭で夾竹桃の世話をしていたのだろう。

そして由仁が座敷牢の扉を壊した音を聞きつけ、やって来たのだろう。

ソレはつまり…

清司郎もまた、今明かされた18年前の真実を知ってしまったというコト…


「お父さんが…
お父さんのせいで…
千鶴子は… 千鶴子は…」


「違う!違うンだ!
そんなつもりはなかった!
聞いてくれ、清司郎!
俺はおまえのためを思って…」


清司郎に向かって両手を差し伸べた孝司郎は、必死の形相で訴えた。

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