嗤うケダモノ
「あらあら、まぁまぁ。
お帰りなさい、由仁さん。
いらっしゃいませ、お嬢さん。」
聞こえてきた、穏やかで優しい声。
フジコの叫びに呼応して廊下を曲がって現れた着物姿の品の良いご婦人を見て、日向は胸を撫で下ろした。
フネだ。
磯●さんチのおフネちゃんだ。
なんか、久々にフツーの人間を見た気がするよ。
「カズヨさん、お嬢さんを客間にお通しして。
お茶をお願いね。」
片手で髪を背に流したフジコが言う。
「ハイハイ。」
ニコニコと笑うフネが言う。
「えー?
カズヨさん、お茶は俺の部屋でイイよー。」
指で下唇を引っ張りながら、全身猥褻物が言う。
不思議な光景だ。
日曜夕方の国民的アニメとカーテンで仕切られた18禁コーナーのコラボだよ。
ほんと、どーなってンだ?
この家は。
『杏子さん』『カズヨさん』
そして、『由仁さん』
ナゼかみんな『さん』づけ。
家族構成が見えやしねェよ。