嗤うケダモノ
由仁の熱い求婚は、怒声に遮られた。
直後、狭い空間を鮮やかな色彩が舞う。
「ぎゃっ?!」
由仁が悲鳴を上げて倒れ込んだ。
「ぎゃっ?!」
すぐ傍にいた清司郎も、由仁の下敷きになって悲鳴を上げた。
…ナニガアリマシタカ?
ハイ、答えはコレ。
着物の裾をからげた杏子が、ローリングソバットを炸裂させマシタ。
体勢を崩すコトなく華麗に床に降り立った杏子が、腕を組んで由仁を睨みつける。
「さっきアンタが清司郎に言った言葉、そのまま返してやるよ。
軽々しく結婚なんて口にしてンじゃないよ、クソガキが!」
「ぁー… ぅー…
ご尤もー…」
由仁は転がったまま、悄然と答えた。
そりゃそーだわな。
なんたって高校生なンだから。
クソガキを自覚した由仁の返答を聞いて、杏子は満足そうに頷いた。
そして、展開に着いていけずに口からエクトプラズムを出す日向をチラリと一瞥してから、由仁に向かって親指を突き出し、バチンと片目を閉じる。
「だけど、さすがは我が息子!
人選眼に狂いナぁシ!」