嗤うケダモノ
ハイ、カワイくない。
アンタ、30過ぎのオッサンだからね?
全くカワイくない中年チワワを見下ろして、盛大に溜め息を吐いた由仁は…
「そんな情けない顔しないのー。」
長い指で、思いっきりキツいデコピンをお見舞いした。
声もなくよろめいた清司郎が、額を押さえて俯く。
あー…
泣いちゃうカナ?
ま、いーや。
泣かしとけ。
「君、さっきの杏子さん、見たー?
コワかったでショー?」
頭をバリバリ掻きながら不機嫌丸出しで由仁が言うと、俯いたままの清司郎がコクリと小さく頷いた。
「アレが、親ってヤツなの。
コドモがガキっぽい暴走はじめたら、身体張って止めなきゃなンないの。
今の君に、あんなコト出来る?
君はまだ、自分のコトでいっぱいいっぱいなンじゃナーイ?」
また、コクリ。
「でショー?
君は、人の親になってる場合じゃねーの。
ちゃんと自分を見て、そんで周りを見て…」
不意に途切れた言葉に、清司郎が訝しげに顔を上げる。
彼が仰いだ由仁は、ドコか遠くを見ていた。
耳を澄ますように。